ニュースの概要
市場調査メディアのIndexBoxが、工業用ホースの世界市場について2035年までの見通しを示した。成長を支える主因は、鉱業と建設で使われる油圧機器の需要だという。ホースは油圧ショベルやダンプ、掘削機械の「血管」にあたる部品で、機械が動けば必ず消耗する。新しい機械の出荷が増えれば最初に装着される分が増え、稼働台数が増えれば交換用の需要も積み上がる。今回の予測は、この二重の需要構造を数字で裏づけたものと言える。一方で、予測値は調査会社の前提に左右される。重要なのは総額よりも、どの用途が伸び、現場の作業がどう変わるかである。
引用元: 工業用ホース市場2035年予測:鉱業・建設の油圧需要が成長を後押し - ニュースと統計(IndexBox)
分析・見解
新品と交換の二重構造が、需要を底上げする
ホース需要は二つの流れでできている。ひとつは機械メーカーが新品の機械に組み込む分。もうひとつは、使用中の機械で傷んだホースを取り替える分だ。景気が悪くなると新品の出荷は落ちる。しかし交換需要は機械が動く限り続く。鉱山や建設現場では、機械を止めること自体が大きな損失になる。そのため、傷んだホースは先送りされにくい。市場予測が右肩上がりでも、中身の安定感は交換側が支えていると読むのが自然である。
鉱業と建設で、ホースへの負担は年々重くなっている
鉱業の機械は大型化が進んでいる。大型の油圧機器ほど、ホースの中を流れる油の量は多く、圧力も高い。建設でも、小型で力の強い機械が増え、同じ太さのホースにより高い圧力がかかる場面が出ている。圧力が上がれば、ホースの寿命は短くなる。曲げ、ねじれ、こすれ、熱といった負荷も重なる。つまり市場の成長は、単に台数が増えるだけではない。1本あたりに求められる性能が上がり、単価と交換頻度の両方が上向く可能性がある。
規格と加工品質が、価格競争より先に問われる
ホースは本体だけでは使えない。端に金具(=継手)を取りつけ、専用の機械で締め込んで初めて製品になる。この締め込み(=カシメ加工)が甘いと、高圧で金具が抜ける。油が噴き出せば火災ややけどにつながる。規格に合った組み合わせを選び、正しい寸法で加工することが安全の前提になる。市場が拡大すると、新規参入や安価な輸入品も増える。価格だけで選ぶと、規格違いの組み合わせが紛れ込むおそれがある。成長市場ほど、品質の差が事故の差になりやすい。
見落とされがちな視点は、ホースの在庫よりも加工の速さ
多くの現場では、ホースの種類を大量に在庫しようと考える。しかし太さ、圧力等級、金具の形の組み合わせは膨大で、すべてを持つのは現実的でない。むしろ強みになるのは、必要な長さと金具で素早く作れる加工能力である。現場に出向いて加工する体制があれば、機械の停止時間は短くなる。需要が伸びる局面で差がつくのは、在庫量ではなく、故障から復旧までの速さだと考える。
ビジネスへの影響
交換需要を取り込むなら、停止時間の短縮を売りにする
ホースを扱う事業者は、物を売る発想から「止めない仕組み」を売る発想へ切り替えたい。たとえば、顧客の機械ごとに使っているホースの仕様を記録しておく。破損の連絡が来たら、同じものをすぐ作って届けられる。こうした台帳づくりは地味だが、取引の継続につながる。交換需要は繰り返し発生するため、一度信頼を得れば安定した収益源になる。
調達側は、価格表より規格と加工体制を確認する
ホースを買う側にも注意点がある。見積もりを比べるときは、金額だけでなく、圧力等級と継手の規格が合っているかを必ず確かめたい。加工を外注する場合は、加工後の耐圧試験を行っているか、記録が残るかも確認項目になる。需要が伸びる時期は納期が延びやすい。そのため、主要な機械の予備ホースは、あらかじめ加工済みで備えておく方法も有効である。
市場予測は、自社の稼働データで読み替える
2035年の予測は、あくまで世界全体の見通しである。自社の事業に当てはめるには、担当地域の機械の稼働台数、高齢化した機械の割合、故障の履歴を見るほうが役に立つ。数字を鵜呑みにせず、自社の現場で何本のホースがいつ交換されているかを把握する。そこから来年の仕入れや人員を決めれば、予測に振り回されずに済む。